これまで、がん患者は入院して治療を受けることが多かったですが、近年では、浸襲の少ない治療の開発や入院期間の短縮に伴って、通院で治療することが多くなりました。また、がん患者の生存期間の延長は、患者にとって闘病生活の期間が長くなったことを意味し、この間通院しながら療養を続ける患者さんが増加しました。
一方、在宅療養する患者さんの側にも変化が見られました。これまで、日常生活動作が低下して介護が必要になり、通院困難となった場合を在宅療養と呼ぶことが多くありました。そのため、訪問看護師のサービスを受ける方の疾患は、脳血管、循環器、筋・骨格系の疾患など、非悪性疾患が多くを占めていました。
ところが、地域における医療や介護の体制が変化し、2006年度の介護保険改正では条件によっては壮年期のがん患者も介護保険の対象者となったため、さまざまな医療機器等を活用しながら在宅療養をすることが容易となってきました。
それでは、がん患者さんにとって在宅療養とは、どのような意義があるのでしょうか?がん患者さんにとって、在宅はこれまでの生活スタイルを継続することが可能な療養環境です。患者さんは多かれ少なかれ、健康に関する何かしらの信念や習慣があります。ある一定の種類の食物を多く取ったり、逆に摂取を制限する場合もありますし、健康状態の維持・改善にスポーツや温泉を取り入れる方もいるでしょう。このような療養上の希望は、入院では継続困難なものがほとんどです。
ところが、実際の療養を調べてみると、がん患者さんの在宅療養支援には不十分な点も多くあります。まず、訪問看護の利用者の実態を見ると、利用者の疾患別内訳では、がん患者はまだ10%以下ですし、在宅療養には看護職の関与が少ないともいえます。
しかし、訪問看護利用者で在宅死亡による疾患別を見ると、全体の4割以上はがん患者さんとなっています。そして訪問看護の利用期間では、在宅死亡した利用者の約3割の利用期間は1ヶ月以内であることが明らかになっています。
こうしたことから、在宅療養をするがん患者さんは、その対象者数は拡大するものの、訪問看護を利用する割合は少なく、しかも訪問看護を利用する場合は、終末期になってから利用を開始していることが分かります。現在では訪問看護師がかかわるがん患者さんは終末期が多い状況ではありますが、外来通院をしている患者さんも含めて、がん患者さんの在宅療養と捉えるのであれば、従来以上に外来や訪問を行う看護師の役割が期待されます。


